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エッセイ#61:11月[2F山口]

11月 「私の円グラフ」2F山口


私は雑食読みなので、難解な本はさておき、ジャンルはなんでもいける。ただひとつ、残念に思うのが、ミステリ小説を楽しめないこと。
子どものころに何を読んできたかで、その後の人生って変わると思う。私は、ホームズもルパンも少年探偵団も、なんならズッコケ三人組すらも読んでこなかった。それが、ミステリを楽しめないことにつながっていると思う。読んだ本よりも読まなかった本に影響を与えられているというのが面白い。エッセイ#61:11月[2F山口]_f0369008_10441449.jpg
小学生のとき、はじめて買ってもらった本は、ルナールのにんじんだった。感想を書いて父に持っていくと、次の本を買ってもらえた。フランダースの犬宝島十五少年漂流記など、児童文学の定番はそうして読んだ。漫画に目覚めたのは、3年生のこと。お腹が痛くて病院に連れて行ってもらったとき、先生は母に言った。「今日は学校を休ませて、飴と漫画を買ってあげなさい」。母は先生が言ったとおりに、飴と雑誌ちゃおを買ってくれた。布団の中ではじめて読んだ漫画の面白かったこと! なかでも赤石路代、篠原千絵、惣領冬実の漫画に夢中になった。その後ドラゴンボールと出会い、通奏低音のように、ドラゴンボールは私の心にあり続けることになる。
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中学生になると映画一筋といってもいいほどで、毎月雑誌のロードショースクリーン、隔月でムービースターを買っていた。中2のある日。友達の提案で、ぶあつい小説を買ってどちらが先に読み終えるか競争しようということになった。友達が選んだのは、当時はやっていたシドニー・シェルダンの上下巻もの。私が選んだのは、ジョン・グリシャムの依頼人。二段組のぶあつい小説を読み終えたときに、大人の小説でも読もうと思えば読めることを知った。弾みがついたので続けてロバート・ニュートン・ペックの豚の死なない日を読んだら、主人公が大事にしていた豚が死んでうろたえた。タイトルと内容の違いに、大人の小説はややこしいことを知った。その後ブラックジャックと出会い、これまた通奏低音のように、私の心にあり続けることになる。エッセイ#61:11月[2F山口]_f0369008_10451748.jpg
転機は高校生。雑誌スクリーンの文通のコーナーで知り合った女の子から、江國香織のきらきらひかる【新潮文庫】が送られてきて、それを読んだ私は、そのときやっと、本当にやっと、小説はがんばって読むものではなく、楽しめるものだと知った。新潮文庫の夏の100冊の冊子の中から、興味を持ったものを読みまくり、司馬遼太郎と出会ったのは大きかった。ミステリには興味がなかったけど、妖怪は大好きなので、京極夏彦の世界にもはまった。文通相手からは、清水玲子の漫画も送られてきて、それがきっかけで、花とゆめの壮大な世界観に痺れた。
ひとつのジャンルに没頭するのではなく、陣取りゲームのようにいろんな本に手を出していくうちに、何でも楽しめる雑食読みになったけど、ミステリ小説の楽しみ方を知らないのが残念でしかたない。

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by a_kawaraban | 2017-11-13 00:00 | エッセイ | Comments(0)

元書店員たちによる読書日記


by おすすめ本処 かわら版